2014年5月21日水曜日

記念日反応-7回目の私の場合

苦手な季節がようやく終わりました。

3月下旬の息子の誕生日にはじまり、
その約1か月後の命日。
そして、子供の日、母の日と続くこの約1か月間。

私にとっては、記念日反応と戦う季節です。

ここ数年は、あらかじめ「この季節は何かやってしまうから気を付けなければ」と
身構えるようになりました。

心理カウンセラーの先生によると、
「自分で心構えができるようになったことは、一歩前進した証拠」
なのだそうです。

だからといって無事では済まないのが、記念日反応のやっかいなところ。
十分気を付けていたつもりの私ですが、今年も散々な目にあってしまいました。


4月上旬の夕方。
ぼーっとする頭と疲れた体を引きづるようにして夕食の下ごしらえをしていた時。
じゃがいもの皮をピーラーでむいていたのですが、手が滑り、
指まで削ってしまいました。

傷口を洗い、修復機能のあるバンドエイドを貼っておいたのですが、
翌朝見たら血の塊のようなものが出来ている。
「これはヤバいかも」と判断し、近所の外科に行くことにしました。

玄関を出てすぐ目に飛び込んできたの入学式帰りの小学生親子。

指よりも、胸がずきんと痛みました。

私は、小学校の入学式に思い入れがあります。
息子の病気が分かって緊急入院した後、応急処置的な治療がひと段落し、
「今すぐに死ぬ可能性は回避できました」と言われ、
数か月ぶりに病院の外に出たのが、ちょうど桜の季節。

「世の中いつの間にか春になっている」と思いながら歩道を歩いていると、
一組の親子が目に入りました。

私より少し年上の、地味だけれど上品でやさしそうなお母さんと、
黒いランドセルを背負った男の子。
二人は胸にリボンを付けて、仲良く嬉しそうに桜の木の前を歩いていました。

数か月間、全てを諦めて病院に閉じこもっていた私には、
その姿が眩しくて、つい夢を見てしまいました。

ひょっとしたら、息子と私も、小学校の入学式に行けるようになるのかもしれないと。

思えば、出産を終え産院から退院させる時にも桜が咲いていました。
そして突然亡くなる数日前に、お散歩に行った時も2人で桜を眺めました。

そんなことが次々と思い出されましたが、それ以上考えないよう自分をコントロールし、
心をまっさらにして外科までの道のりを歩きました。
(ここ数年で身に付けた技です。)

ぼんやりしたまま受付を済ませ、診察していただたのですが、
私のカルテに目を通した先生は「毎年4月に来られていますね」と指摘しました。

カルテを見せていただくと、昨年は同じ時期に火傷をして駆け込み、
一昨年は命日にアボガドと同時に指を切り駆け込んでいました。

思わぬ私的に動揺し、
「ああ、ここ数年は心にでなく体に傷を負っていたのだなぁ」
と思いながら考えました。
この先生に、どこまで自分の事情を開示すべきかを。

頭に浮かんだままの言葉をいう訳にはいきません。
「この季節は息子が死んだ季節で、記念日反応なんですよー」
等と言ったら相手は困ってしまいます。
そして困った人と言うのは「何かを言わなければ」と思うあまり
配慮のない言葉をひねりだしてしまう可能性が高いのです。

かといって何も言わないと、「家事が年に一度下手になる主婦」となり、
不審に思われてしまいます。
そして人と言うのは一旦不審に思うと、掘り下げるような質問をするものなのです。

私は一言だけ言うことにしました。
「4月はどうも苦手な季節で」と。

先生はそれ以上聞かず、丁寧に処置をしてくださいました。

そして翌日、発熱。
薬を飲むのもおっくうで、1日中熱にうなされていました。

翌々日。
外科に経過を見せに行くと、経過は良好とのこと。
「その後お変わりはありませんか?」と聞かれたので
「高熱が出ました。傷のせいではないとは思いますが」
とつぶやきました。すると先生は、
「傷の状態は良好ですから、その可能性はありません。
風邪もお薬も出しておきますよ」
とおっしゃってくださいました。

そしてさらに
「しっかり食事をとってくださいね。
傷の回復にはビタミンAが必要ですし、風邪の回復にはお野菜が必要です。
今夜は牡蠣鍋にするとよいと思います。体も温まりますし」
と夕食の献立までアドバイスしてくださいました。

食欲のなかった私ですが、その親切に後押しされるように、
スーパーへと向かいました。

あいにく牡蠣の季節は終わってしまったようで入手できませんでしたが、
心が温かくなり、夕食を作る気力が湧きました。
そしてそれから2晩で回復することができました。


怪我をしてしまった当初は
「気を付けていたのに、やってしまった」と落ち込みましたが、
私も少しは対処方法が身についてきたかもしれない、
と思えた7回目の春でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿