2014年9月11日木曜日

ANNA GRIFFINのカード(5)エレベータースピーチ2

久しぶりになってしまいましたが、創業物語の続きです。
お取引に至らなかった、とあるキャンドルメーカーとの交渉のお話その3です。

【今までのお話】
ANNA GRIFFINのカード(1)出会い
ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください
ANNA GRIFFINのカード(3)キャンドルメーカー
ANNA GRIFFINのカード(4)エレベータースピーチ

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜

オーナーはまだあどけなさの抜けない顔をしていて、
でも目だけは冷静に私を見ています。

与えられた、というよりもぎ取った時間は1分。
この時間で、商談の交渉をすることはできません。
印象を残して「こいつの話を聞いてみよう」と思わせることが私の目標です。

アメリカ人から見ると、日本人は若く見えると言います。
彼はきっと私を同世代の女性だと思っていることでしょう。

私は、この自分のギャップと過去のキャリアを使うことにしました。

”私は日本から来ました。昨年起業したばかりです。
私は2年前までIBMでシステムエンジニアとして働いていました。
息子を小児がんで亡くしました。そして、喪のギフトを改革したいと考えています。”

ここまで話すと、彼はびっくりして
Oh that's too bad. I'm sorry to hear that.
と言いました。私は構わず続けます。
だって私には1分間しか時間がないのです。

”日本では、毎日仏壇に線香とろうそくを供える習慣があり、
遺族にお線香を贈る伝統的な習慣があります。

しかしこれは現在のライフスタイルにマッチしていない。
私はグリーフケアができる遺族の個性にあったギフトを
あなたのろうそくは、日本人の好みに合っていて
モダンで、香りにストーリーがあります。

私は息子を亡くした時、あなたのろうそくをギフトとして受け取りたかった。
だから私は日本にあなたのろうそくを輸入したいのです。

しかし、いくつか困難があると聞かされました。
詳しくお話をする時間をいただけないでしょうか。”

言いたいことはたくさんありますが、そろそろ1分のはずです。
自分のビジネス能力をプレゼンテーションするという意味でもそろそろ切り上げなければなりません。

彼は時計を見ながら言いました。
「申し訳ないけれど、今日はこれからディナーの約束がある。
明日の午後にしてもらえないだろうか」

明日。明日なら、日本からミプロの貿易アドバイザーさんがやってきて
午後には商談のサポートをしてくださるはずです。

「ありがとうございます。明日の午後2時はいかがでしょうか」
「いいですよ。では明日の午後2時に」
「お時間くださってありがとうございます」
私たちは再び握手をして別れることになりました。

忙しそうに去っていく彼を見送りながら、私はしばし呆然としてしまいました。

そんな私を我に戻したのは、タンパから来ている彼です。
どんっと私の肩をたたきました。
「やったな。お前、すごいな!!」
百戦錬磨のように見えた彼も興奮しているようで、言葉遣いが乱れています。

「私、アポイントをとったよね」
「ああ、明日午後2時だと確かに約束したぞ。
明日俺はいないが大丈夫か?」
「うん、明日なら私の輸入アドバイザーが日本から来てくれるの」

いつのまにか騒ぎを聞きつけてブース中のスタッフが集まってきます。
最低注文金額に悩んでいた素人くさい日本人バイヤーが
大メーカーのオーナーとの約束を取り付けたのです。

とっくに帰ったと思われたおじいちゃんスタッフまでやってきて私に聞きます。
「おまえさん、いったい年はいくつなんだ」
「38歳よ」私が胸をはって答えると、スタッフ全員でコントのように
「なんだってぇーー?!」とのけぞってくださいました。

私はパンフレットやサンプルを沢山いただいて、Bobのブースを後にしました。

最後にBobが声をかけてくれました。
「交渉は難しいと思うが、きみは大きなチャンスを手にした」
「ありがとう。また明日」

難しいのは重々承知。
「これでジ・エンド」と思われた可能性が復活したのです。
私の一世一代のエレベータースピーチは成功したと言ってもよいでしょう。

すぐにホテルに戻って明日の作戦を練りたいところですが、私には行くべきところがありました。
グリーティングカードの会社のブースです。

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜


ANNA GRIFFINのカード(6)作戦会議へ続きます。


※時系列的には「ANNA GRIFFINのカード(2)カタログをください」の後半部分へ移動します。

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